酒井先生(以下酒井) 現代のお母さんの根本的な難しさというのは、コミュニケーションがないということですね。母親のコミュニケーションの場は、地域と子どものPTA関係のもの、おおよそこの二つしかありません。
ところが、現代はこの二つがともにダメになってしまっています。地域というのは、都市化によってすでに崩壊してしまったに等しい状態です。また、もう片方のPTAといえば、逆にストレスを感じる場のようになっています。
しかも、ここにきて核家族化の影響で、育児の仕方が分からないという人も多くなってきています。そこで、精神的な失調をきたして子供にあたり、いろいろなマイナスの要因を与えるというケースがでてきているわけです。
何年も続くと最悪の場合、虐待にまでいきかねません。実は、これも昔はさほど目立ちませんでした。というのも、昔は子供たちも近所に遊び仲間がいて遊ぶ機会も多かったし、地域全体がその地域の子供の面倒を見ていくような性格だったからです。
ですから、現代の親子問題の根本解決には、地域や教育の問題などのかなり大きな環境の変革が求められてくるのです。
酒井 あります。意外かもしれませんが、高い効果が期待できるのが食生活を改善するということです。現在、大人から子供までが染まっている高炭水化物、低脂肪、低タンパク食事、これを変えていくことが必要です。ポテト菓子、ペットボトル飲料、いわゆるジャンクフード類ですね。
これらは摂取すると単糖のグルコースになるスピードがとても早く、血糖値がすぐに上がると同時にインスリンの急激な分泌を促します。そのために、ブドウ糖の血中濃度が変化しやすくなってしまうのです。ブドウ糖が体内にできるというと元気が出ると思うかもしれませんが、実はその急激な上昇は、脳内に麻薬のような物質を作り出すことがわかっています。
また、血糖値の急激な上昇によるインスリンの大量分泌は、同時に低血糖の症状を引き起こすこともあります。この場合、精神分裂症と区別がつかないぐらいの症状を表すこともあるのです。
いったんこの状態になると、こうした食生活をなかなか断ち切れません。そして、精神的にすごく不安定で、怒りっぽく、いつも不平不満を感じるようになってしまうのです。
酒井 まず、誰もが始められることがあるとすれば、100%の精製塩からミネラル分の多い天然塩に変えたり、栄養補助食品を取り入れることも、とても効果が期待できると私は考えています。というのも、現在の野菜は昔に比べてミネラル、栄養価とも残念ながらかなり低くなっているからです。
ことに、わたしが最近注目しているキトサンという食品は、血糖値のコントロールにも関係し、今までの学問では理解できない働きがあります。キトサンを摂ると今までは傷やイボの治りが早くなると言われてきました。専門的に言うと繊維芽細胞の増殖因子、成長因子になると言われてきたのです。
おそらくこのキトサンの因子は脳細胞の乱調を正す方向にも働くのではないかと思います。実際、そういった悩みを持つお母さんにもすすめて、とても喜んでいただいています。もし、子育てでイライラしている、というお母さんがいらしたら、ぜひ一度お試しになってはいかがでしょうか。
1951年東京生まれ。東京大学文学部卒業、筑波大学医学研究科博士課程修了。
精神科医、医学博士、日本医師会認定産業医、臨床心理士。
現在、ストレスケア日比谷クリニック院長。おもに心身症、摂食障害、気分障害(うつ病)、強迫性障害などの治療に従事。