酒井和夫先生のメンタルケアコラム
第十三回

うつ状態を防ぐために

「うつ病」とは、具体的にどんな状態をいうのでしょうか?

酒井先生(以下酒井) 誰でも生活の中において喜怒哀楽があると思うのですが、その中でも、何も理由がないのに気分が落ち込んだり、意欲が低下する状態が一週間以上続いて日常生活が普通に送れなくなった場合、「うつ状態」であると考えられます。

特に女性に多くみられるといった傾向はありますか?

酒井 男女ともうつは増えています。なかでも、過食から始まって、うつになる若い女性が急増しています。また男性と違って、会社などで怒ったりできないなど我慢しなくてはいけないので、結果として、怒りを内面に溜め込んでしまう女性もうつの状態になりやすいですね。

うつ状態を防ぐためにはどのようにすればいいのでしょうか?

酒井 まずは、夢中になれるものを見つける。それこそアイドルの追っかけでもいい。とにかく心がダイナミックに動くような、非日常的な趣味がある人はうつ状態になりにくいと考えられます。

周りはどのように接し、ケアすればいいのでしょうか?

酒井 うつ状態に陥っている人は無理をしがちなんです。早く良くならなければと無理な努力をする人は再発する可能性も高いんです。周りの人のケアとしては、本人よりも気長にみてあげることが大切ですね。
「うつ病」という一種の病気よりも「うつ症候群」と呼ばれる人が多く見受けられます。その人なりに様々な理由があげられ、もちろん個人差もありますが、何となく億劫だと感じる人々があとをたたない。それだけ現代社会は、精神的な失調を起こしやすい時代といえます。

薬以外の治療法はあるのでしょうか?

酒井 本来、薬の多くは自然の資源が原料となっています。アマゾンなどの秘境にはまだまだ発見されていない自然の資源があって、多くの製薬会社がジャングルに入って調査しています。まさに、自然の中に健康の秘訣があるわけです。
また、人間が日頃食べているものでも、その作用が分析されているものはわずか10%程度といわれています。食物の力にはまだまだ未知な部分があり、その力に対する敬意がなくてはなりません。
私が通常の薬のほかに、心によい作用を与えると思われる健康食品の摂取をお勧めするのはこのスタンスからです。

健康食品は自然物を精選したものという意味では、食物であると同時に薬としての効果も期待できるんですね。日本ではこれまでメンタルな面に健康食品を生かそうという姿勢がなかったのですが、ストレス社会が日ごとに加速していることを考えると、そのような研究は今後ますます重要になってくるはずです。

具体的には、どんな食品を利用されているのでしょうか

酒井 水溶性の低分子キトサンが主成分となった健康食品(ヌーススピリッツ)です。すでに学会でも何度か発表しているのですが、水溶性低分子キトサンには薬に見られる副作用がなく、うつ状態・不安・情緒不安定・不眠・拒食・過食などの心の失調に極めて有効という経験をしています。

極めて有効というと、どのくらいの効果が見られたのですか

酒井 普通の薬を使ってうまくいかなかった約500人にキトサンを飲んでもらったところ、約8割が改善しています。攻撃性を緩和するためにあらゆる薬を使っても治らなかった人が、キトサンだけで治ったという、信じられないような例もあります。キトサンはストレスが「心の失調」に進行するのを防ぐ抗ストレス的な作用を持っています。

うつ病の場合は、キトサンで全面的に治るわけではありませんが、抗うつ薬の投与に踏み切る前の段階であればほとんどの場合有効ですし、まれに薬の効かない治療困難例に対して、劇的に効くこともあります。

キトサンがどのように心の失調に働きかけているのでしょうか。

酒井 キトサンは食物繊維ですから分解も吸収もされず、当然その成分が脳に入ることもないのですが、不思議なことに脳への作用は現象として確かにあるんです。

おそらく、これは腸の活動に深く関係していると思われます。意識が抱えたストレス状態というのは腸の活動に密接に関係していて、精神的な不調が起きた場合、便秘や下痢等、消化器系の不調を伴って現れる場合が多いんですね。水溶性の低分子キトサン(スピリッツ)には腸管の働きを活性化する作用があることは広く知られていますが、その作用によって下痢や便秘の改善をする働きがあります。

その改善が、今度は腸の末梢神経系を介して脳の中枢へとつながり、精神的な症状にも改善が見られるということなのかもしれません。脳と腸を結ぶ神経系の双方向からの情報伝達の反転経路ですね。腸脳論という言葉があるくらいで、腸と脳の間にはまだ医学では知られていない密接な情報のやりとりがあるようなのです。

PROFILE

精神科医 酒井先生のプロフィール

1951年東京生まれ。東京大学文学部卒業、筑波大学医学研究科博士課程修了。
精神科医、医学博士、日本医師会認定産業医、臨床心理士。

現在、ストレスケア日比谷クリニック院長。おもに心身症、摂食障害、気分障害(うつ病)、強迫性障害などの治療に従事。

目次(全20回/予定)
第13回 「うつ状態を防ぐために」
第12回 「更年期を乗り切る」
第11回 「引きこもりについて」
第10回 「育児ストレスの対処法」
第09回 「サンタクロースって本当にいるの?あなたならどう答えますか?」
第08回 「子どもの心とシンクロできる親のインスピレーションを磨く。」
第07回 「子どもたちの健全なこころの育成は大人たちの健全な精神生活にある。」
第06回 「親の考え方が柔軟になれば子どもも自ずと夢を描ける。」
第05回 「子供が抱える悩みは親の抱える悩みと共通しています。」
第04回 「未来から現在を見る。その視点が明るい未来を切り開きます。」
第03回 「親の健康が子供の心を育む。食生活はなによりも大切です。」
第02回 「心と心が通い合う。その第一歩は円満な家庭から始まります。」
第01回 「子供との心の関係性は、大人たちの意識の変化が不可欠です。」