昔から親に対する子どもたちの一番の不満は、何かにつけ「ダメ!」といわれることだったろうと思います。言い換えれば、「禁止」という形の躾けが、日本では主流だったわけです。子どもは人生経験が浅く、危険なことを知らない場合がありますから「禁止」で躾ける必要がないわけではありません。しかし、これは稀なケースで一般的には「禁止」に頼る躾けはよくないとされています。
一方、優秀な教育者といわれる人々は、とても柔軟な対応しています。陰でほめたほうがいい場合、みんなの前でほめたほうがいい場合、ひとりの子どもでも、状況によって異なります。また、叱り方にしても、子どもの成長の芽を摘まない上手な叱り方をすることができるのです。
たくさんのケースがあるのですが、それぞれにマニュアルがあるわけではありません。もちろん長年の経験に基づく部分もあると思いますが、ほめるほうにも禁止するほうにも、彼らには直感的に判断できる能力が身についているのです。
では、私たち普通の人間が、子どもに接するときに、彼らと同じ様に接することができるのでしょうか。一見、とても難しいことのように思えます。でも、それは彼らにもマニュアルがあるわけでもない、といったように心の持ち方で可能になるのです。
以下は、1897年にヴァージニア・オハロンという少女が、ニューヨークの新聞『サン』に出した質問の手紙です。『編集長さま。私は8歳です。私の友だちは、サンタクロースなんていないっていいます。パパに聞いたら、「もし、サン新聞にそう書いてあるのならそうだろう」といいました。本当のことを教えてください。サンタクロースはいるんですか? ヴァージニア・オハロン』
これに対し、編集者のフランク・チャーチは、次のような返事を社説欄に掲載しました。
「ヴァージニア、君の友だちは間違っているよ。そうだよ、サンタクロースはいるんだ。彼は、確かにいる。それは、愛や寛容、そして献身が確かに存在していて、君も知っているように、それらが、君の生活にすばらしい美しさと、喜びを与えてくれるのと同じなんだ。誰も、サンタクロースを見たことがないというのは、サンタクロースがいないということじゃないんだ。世界で一番の真実は、子どもにも大人にも見えないんだよ。君は、芝生の上で妖精がダンスをするのを見たことがあるかな?もちろん、ないだろう。でも、それが妖精がいない証拠にはならないんだ。誰も、世界にある、目に見えなかったり、見えなくなることができる不思議なことのすべてを、想像したり、心に描いたりすることはできないんだ。」
この社説は、多くの人々の共感を得て、「サン」紙が廃刊になる1 9 4 9 年まで毎年掲載されたといいます。誰もが自分の子どもに対して、心に描く理想の教育や躾けをしてあげることはできないかもしれません。ただ、フランクがヴァージニアに書いた返事には、ひとつの素晴らしいヒントがあるように思えます。それは、大人自身が本当に大切なものに気づく感性を備えているか、ということです。
子どもからの質問は素朴ながら、答えにくいものがたくさんあります。しかし、「大きくなればわかる。」とか「うるさいわね。しつこいわね。」では、もっと答えになりません。これが子どもの成長の芽を摘むのです。私は、フランクがその豊かな感性で、ヴァージニアの心に生涯残るみごとな答えを出してあげたと思いますが、みなさんはいかがでしょうか?
現在の多くの大人たちは、仕事に追われ、時間に追われ、デジタル社会のストレスを心と身体にため込んでいます。心にも思ってないことでしょうが、そのしわ寄せは子どもたちに対する態度にも表れてしまっているケースがあります。とても子どものインスピレーションを育むどころの話ではありませんね。こうして、トラウマを抱えた子どもたちが、成長して自分の子どもたちと接するとき、再び同じような接し方をする負の循環が、20世紀後半からはじまっているような気がします。「子どもの躾けに手を焼いている。子どもの質問に答えるのが面倒でしかたがない。ちらかされたり、まわりで騒がれるとイライラして怒鳴ってしまう。とにかくいうことを聞いてくれない。」
子育ての悩みに、対象である子どもを変える特効薬はありません。なぜなら、それが子どもの自然な態度だからです。では、あきらめるしかないかというと、そうではありません。大人の側が成長して、感性を高め、イライラしないための手だてをとればいいのです。
子どもとの会話の仕方や躾け、教育法などのいわゆるテクニックは、その専門分野の本もあると思います。しかし、フランクからヴァージニアへの返事は、テクニックではなく彼のハートから書かれたものではないでしょうか?私は、この点をもっと大切にしていただきたいと思っています。
そして、大人の人たちのストレスに対しての一助として、『ヌーススピリッツ』をぜひ、お役立ていただきたいと思ってます。私は精神科医として、うつ病や過食症などの患者さんと数限りなく接してきました。当然、抗うつ薬などの様々な薬品を治療に用いるのですが、副作用が多い薬がほとんどで使いにくいのです。低分子水溶性キトサンを材料とした健康食品『ヌーススピリッツ』は安全な上に、副作用や依存性もなく、様々な用途に使えます。私どものクリニックでも多くの患者さんにすすめたところ、たくさんのよい報告をいただいています。
1951年東京生まれ。東京大学文学部卒業、筑波大学医学研究科博士課程修了。
精神科医、医学博士、日本医師会認定産業医、臨床心理士。
現在、ストレスケア日比谷クリニック院長。おもに心身症、摂食障害、気分障害(うつ病)、強迫性障害などの治療に従事。