酒井和夫先生のメンタルケアコラム
第二回

子供との心の関係性は、大人たちの意識の変化が不可欠です。

心と心が通い合う。その第一歩は円満な家庭から始まります。

子供たちが集まって、何人かで一緒に遊んでいる姿、時折見かけますね。彼らをよく観察してみると、昔の子供たちに比べて、遊びが遊びとしてうまく成り立っていないように思います。

昔の遊びといえば、かくれんぼや鬼ごっこをはじめとして、ほとんどがロールプレイ(役割遊び)の要素をもっていました。中にはケンカに発展してしまうようなこともありましたが、それも子供たち同士の意思のつながりが遊びのなかに反映していたからこそのことでした。

たくさんの子供たちが地域にいた時代。異なる学年の子供も一緒になってはじめて遊べる遊びをふんだんに楽しむことができたのです。現代では何らかの道具や器具・テレビゲーム等を順番や交代で使う、という遊び方をしている子供たちが多い事は見逃せません。これらは直接的なコミュニケーションなしでもできる遊びですね。

遊びとは、子供にとっては大切な仕事のようなものです。遊びを通して、創造性や感受性・社会性などが育まれるのです。肝心のそのような遊びが成立しにくくなった今日、地域社会が子供のインスピレーションを育むことは、とても困難な状況にあるといえます。 

では、子供のインスピレーションは誰がどうやって育めばよいのでしょう?学校は学校としていろいろな施策を検討しているところもあるようですが、しかし、ことインスピレーションに関して言えば乳幼児期からの問題になりますので、やはり家庭の環境を考えることが中心になります。

インスピレーションを育むいくつかの方法

皆さんは、お子さんとどのように接していますか?ここで、子供のインスピレーションを育む方法として、いくつかの例を考えてみました。

●家族で行動するとき、できるだけ子供にいろいろなことを決めさせる。
例えば、外食するなら、どこへ行く。何を食べる。バス?電車?何を着ていく。この例に限らず、暮らしのなかで選択する場面は無数にあります。これは、子供にとって未来を選ぶ訓練にもなります。

●叱るときにメリハリをつける。
叱るということは怒るということと一線を画します。子供を憤りや欲求不満のはけ口にするのは、もってのほかです。いいかえれば規則をつくるということです。感情的に接するのではなく、絶対やってはいけないこと、やらない方がいいこと、積極的にやった方がよいことを学ばせるのです。
こうした微妙な変化を感じわけるということも、インスピレーションの発露になります。

●頭のなかに映像としてイメージを抱かせる。
絵本ではない昔話やおとぎ話を読んで聞かせることはとても重要です。画像からの情報はあまりイメージ力を働かせる必要がありません。テープやCDなどで聞かせてもよいと思います。

●コミュニケーションを使う遊びといえば、昔ながらのジャンケン遊びのようなものもおすすめできます。
対面して「せっせっせっ」とやる遊びを、親子でやったり、子供たちに教えて子供同士でやらせるのもよいでしょう。

直感の働かない家庭では暴力が支配しやすい

子供に対する接し方だけでなく肝心の親自身もインスピレーションを高めなくてはいけません。私たち大人はとかく因習に走ってしまい、自己で選択することを放棄しがちです。忙しい日常の中で色々な事をゲーム感覚で気軽に試してみる、好奇心を忘れない、などもその訓練になります。

私のクリニックには、お子さんの衝動性疾患の治療の際、ご一緒にみえるお母さんもたくさんいます。そのお話を伺っていると、やはりお互いに直観力が働かない家庭ほど、暴力が支配する傾向があります。

直感とは未来へ対する感覚でもあります。未来をどうやって指し示すか、という大事な問題です。これは精神科医としても実に難しい問題です。どうか、ご家族みんなの問題としてとらえ、お子さんとご自身のインスピレーションを共に育てて頂きたいと思います。

PROFILE

精神科医 酒井先生のプロフィール

1951年東京生まれ。東京大学文学部卒業、筑波大学医学研究科博士課程修了。
精神科医、医学博士、日本医師会認定産業医、臨床心理士。

現在、ストレスケア日比谷クリニック院長。おもに心身症、摂食障害、気分障害(うつ病)、強迫性障害などの治療に従事。

目次(全20回/予定)
第06回 「親の考え方が柔軟になれば子どもも自ずと夢を描ける。」
第05回 「子供が抱える悩みは親の抱える悩みと共通しています。」
第04回 「未来から現在を見る。その視点が明るい未来を切り開きます。」
第03回 「親の健康が子供の心を育む。食生活はなによりも大切です。」
第02回 「心と心が通い合う。その第一歩は円満な家庭から始まります。」
第01回 「子供との心の関係性は、大人たちの意識の変化が不可欠です。」