酒井和夫先生のメンタルケアコラム
第十二回

更年期を乗り切る

更年期の症状というのはどういう仕組みで起こるのでしょうか

酒井先生(以下酒井) 視床下部と脳下垂体と卵巣をつなぐホルモンの複雑なフィードバック回路があります。それが正常に働いて、実際の月経周期なんかがあるわけです。しかし、更年期に入ると様々なホルモンが低下してきます。

ホルモンというのはかなり大きな影響力を持っていて、この低下によってほとんどの不定愁訴(※特定の病気としてまとめられない漠然としたからだの不調の訴えのこと。頭が重い、疲れやすい、食欲がないなど)が起こってくるんです。体のだるさやほてり、精神的には憂鬱になりがちになりますし、胃腸系も循環系もうまく働かなくなったりもします。
特に生理の前後では非常に調子が悪くなったり、また、それを境にして、骨粗鬆症なども起こりやすくなってきます。現代の特徴というのは、そういう症状が若い人にもずれこんできているんですね。三十代前半から悩む方もあるのでかなり気をつけなくちゃいけないですね。

そうした更年期の低年齢化はどうして起こるのですか?

酒井 いろいろな理由があると思いますが、一番はやはり生活環境が変わってきているということですね。特に食生活と環境ホルモンの影響が大きい。最近の少子化の一因には、こうした影響で女性の身体が妊娠しにくくなっているということもあるんですね。統計的に見ても、ここ十年間ぐらいで、ホルモンの失調がかなり起こりやすくなっています。

十五年ぐらい前までは、月経前症候群という症状名はあっても、最近のように調子が悪くなって何もできなくなるという人はそんなにいませんでした。

ところが最近はそうではない。二十代の女性ですでに、女性ホルモンの働きが十分じゃないという人もかなり増えてきていてそれとともに、気分が落ち込んだり、イライラしたりとか、そういう自律神経系、精神系の失調が大幅に増加してきているのが現状です。

専門的な治療としてどんな方法があるのでしょうか?

酒井 こうした症状を薬で治すのは結構難しくて、抗うつ薬もあまり効かないんですよね。かといって、ホルモン療法は専門家でもとても難しいと言われています。ホルモン療法は本来、内部から作られているホルモンを外から与える治療法なわけです。

ですから、本人のホルモンの分泌能力をだめにしていってしまう。今、低容量ピルというのが避妊薬として認可されているんですが、それですら副作用が結構あります。ガンを発生させる遠因にもなったりして、あまりおすすめはできません。

専門的な治療でも難しいとなると、生活一般の中で対処する方法はありますか?

酒井 実践的な対処法として考えられるのは、食生活の中にホルモンの働きをよくするような自然の恵みを取り込むことです。ホルモンの環境を整えて、かつ、ホルモンではないような食品というのは非常に有用だと思います。たとえば、わたし自身は最近、ラフマ(ヤンロン)というハーブ系の植物にとても注目しています。

婦人科の先生が女性のホルモンバランスに効用があるというのを発見されて、特に月経前後の精神の不安定さや更年期による不定愁訴の症状を数多く治すことに成功していらっしゃいます。このラフマ葉素材のサプリメント(※ヌースマインド)を私のクリニックでも、使っていますが、かなり評判はいいようです。

PROFILE

精神科医 酒井先生のプロフィール

1951年東京生まれ。東京大学文学部卒業、筑波大学医学研究科博士課程修了。
精神科医、医学博士、日本医師会認定産業医、臨床心理士。

現在、ストレスケア日比谷クリニック院長。おもに心身症、摂食障害、気分障害(うつ病)、強迫性障害などの治療に従事。

目次(全20回/予定)
第13回 「うつ状態を防ぐために」
第12回 「更年期を乗り切る」
第11回 「引きこもりについて」
第10回 「育児ストレスの対処法」
第09回 「サンタクロースって本当にいるの?あなたならどう答えますか?」
第08回 「子どもの心とシンクロできる親のインスピレーションを磨く。」
第07回 「子どもたちの健全なこころの育成は大人たちの健全な精神生活にある。」
第06回 「親の考え方が柔軟になれば子どもも自ずと夢を描ける。」
第05回 「子供が抱える悩みは親の抱える悩みと共通しています。」
第04回 「未来から現在を見る。その視点が明るい未来を切り開きます。」
第03回 「親の健康が子供の心を育む。食生活はなによりも大切です。」
第02回 「心と心が通い合う。その第一歩は円満な家庭から始まります。」
第01回 「子供との心の関係性は、大人たちの意識の変化が不可欠です。」