吉家先生のなるほど!心理学講座
第二回

「不安って、どこからくるの?(2)」

不安の元を追い出した原因

不安を軽減する方法は他にも色々とありますが、しかしいつでも有効とは限りません。そもそも「不安の元」を「普段の心」から追い出した原因が不明のままだからです。もし原因が判明し対処することができれば、不安感は自然に解消するはずです。

この「不安の元」を追い出した原因は、成育歴の中に潜んでいます。ときにはとても個人的な事情が含まれるので、その全体をここで説明することは無理だと思います。ですので、代表的な例をいくつか示すことで、皆さんの参考にして頂ければと思います。

まず比較的多く見られるのは、親が子どもに自分のことを判断させずに育てた場合です。
「お母さんの言うことを聞いていればいいの」などと言って失敗させないように育てる一方で、たまたま本人が失敗するとひどく叱ったりしてしまうと、自分で判断することが怖くなります。自分の判断に自信が持てなくなり、照明のスイッチを本当に切っただろうかとか、玄関のカギをちゃんと閉めただろうかなどと、不安が後から後から湧いてくるようになってしまうかもしれません。完璧でないといけないといった気持ちになってしまうのです。

自分がこんな育てられ方をしたと感じたら、どうしたら良いでしょうか。もちろん回答は一つではありませんが、原理的に言うなら「失敗をしてみること」だと言えるでしょう。あまり被害が大きくないことについて、自分から失敗してみるのです。コーヒーに砂糖のつもりで塩を入れ、頭からマヨネーズをかぶり、服を着たまま風呂に入ってみるのです。「こうでなければいけない」と信じていることを壊してみましょう。そうすれば、人生の一大事はそれほど頻繁には起こらないということに、気づくはずです。

親の隠し事が子どもに与える影響

これは参考例(意図的に少し変えてあります)の一つです。昔、息子さんの手洗いが止まらないと言って来られたお母さんが居られました。1日に100回ほども洗うと言われます。色々お話を伺う中で、息子さんの出生に関する問題が浮かび上がりました。実は、妻子ある男性との間に生まれたそうなのです。

しかし母親として正直に言うことができず、普通の恋愛で身ごもったけれども、その後その男性が、他の女性を好きになり結婚してしまったと説明していたのです。でも、家族というものは、ちょっとした仕草、表情、声の調子から、全ての秘密が何らかの形で伝わってしまうものなのです。息子さんは、何か不安なものを潜在意識で感じていたのでしょう。

私は、このお母さんに、勇気を出して全てを息子さんに話すようにお勧めしました。少し時間はかかりましたが、あるとき覚悟を決めて話されたそうです。そして、その日から、息子さんの手洗いは治りました。

子どもの頃のトラウマ

これは米国の例です。ある真面目な男性(30代)が、会社の人事部にその能力を認められ、管理職への昇進を勧められました。ところがその男性は、「私にはそんな能力はとてもありません」と、昇進を断ったのです。そして、翌年も断りました。3回目の面接で、人事部長が不思議に思い「君は明らかに実力があるのだから、何か原因があるはずだ」と、心理カウンセリングを受けるように勧めました。

ところで、この男性には「気をつけないと足をすくわれる」という口癖がありました。何回か心理カウンセリングに通う中、ついに原因が判明したのです。それは、小学生の時、プールサイドを歩いていたら友達がふざけて足をつかんで引っ張ったのです。彼はプールに落ち、もう少しで溺れるところでした。一見関係ないようなことが、私たちの心の中では結び付いてしまうことがあります。

心理カウンセラーは、それ以来プールが怖くなり泳げないまま大人になった彼に、是非泳ぎを練習するようにと勧めました。元々真面目な彼が、一所懸命に泳ぎを覚えたところ、翌年、にこやかに昇進を受けることができたのです。

私に注意を向けてほしい

少し違う状況ではあるのですが、不安だと言って周囲に助けを求める人がいます。先程バイクですれ違った歩行者を、実は轢いてしまったのではないかとか、友人の家に遊びに行ったときに床の汚れを自分が付けてしまったのではないかとか、様々な心配事が発生します。よく話を聞いてみると、とても寂しい、誰かにかまって欲しいという気持ちが強く出てくることがあるのです。

こんな場合も、「私は寂しいんだ」と率直に認めることができると、不安症が軽くなるときもあります。こうした方々の場合には、むしろそこからが大切で、なぜ寂しくなったのか心理カウンセリングで解明するとか、どうしたらその寂しさを解消できるのかといった現実的な智恵について話し合うことが必要になるでしょう。

心理カウンセラーはシャーロック・ホームズ

心理カウンセリングの辞典まで出版された有名な心理カウンセラーの先生が、心理カウンセリングについて「まるでシャーロック・ホームズの探偵小説みたいに推理を働かせる必要があります」と、話されていました。私たちの心は目に見えないだけに、注意深く親切な目で探求し、何を普段の心から追い出してしまっているのかを知る必要があるのです。

PROFILE

心理コンサルタント 吉家先生のプロフィール

吉家重夫。心理コンサルタント。日本心理アドバイザー協会会長。「統一場心理学」提唱者。
1994年「内在者理論」という新たな心理学を提唱。1996年、応用心理学研究所設立。1999年、日本心理アドバイザー協会設立。2001年、年「内在者理論」を発展させた「統一場心理学」を提唱。

目次(全5回/予定)
第3回 「うつについて」
第2回 「不安って、どこからくるの?(2)」
第1回 「不安って、どこからくるの?(1)」