何か不安なことが出てくると、それがいつまでも頭から離れずに眠れなくなったり、緊張してしまい、いつもの実力を発揮できなくなることがあると思います。不安は、心の問題の原因であり入り口になるのです。そればかりか、不安になると、周囲の人が良いアドバイスをしても、耳に入らなかったり、実行する気分になれないかもしれません。
つまり不安は、様々な問題の解決を阻む壁にもなってしまいます。そこで今回、心理学シリーズの連載を始めるに当たり、不安症を取り上げることにしました。
まず、問題を解決するためには、敵の正体を知る必要があります。
不安とは、いったい何でしょうか。
私は、統一場心理学という新しい心理学を構築しました。そして、その心理学を使うと、一見難しい問題にも分かりやすく的確にお応えできると考えています。
皆さんを悩ませている「不安」は、一体どんな性質をもっているでしょうか。勿論、ここで問題にしているのは、すべての不安ではなくて、感じ過ぎる不安、考えても仕方ないのにずっと心を占領してしまう不安、頭の中をグルグル回っていて、私たちの毎日の生活を邪魔する不安です。
実はこれらの性質の中に、既に相手の正体を示す特徴が含まれています。それは、いくら考えても頭の中をグルグル回っているだけで解決しないという性質です。心は目に見えませんが、皆さんは、普段の生活の中でこれに似たことをかなりの回数、見聞きしているのではないでしょうか。
例えば、「部長は、私のことを誤解しているのでは」と心配したり、「好きな異性が、自分のことをどう思っているか」と気にするような場合です。
どちらの場合も、相手に聞くことができれば解決するのに、それができないばかりに、部屋の中をグルグル歩いたりするのではないでしょうか。
実は、このようにグルグル歩く状況と、不安が心の中をグルグル回るのには、とても共通した要素があります。それは、今あなたがグルグル回っているところには、解決策がないということなのです。解決策がないから、どんなにグルグル考えても、問題を解決することなどできず、いつまでもイライラしてしまうのですね。勿論、そうなるには理由があります。部長や異性の人に直接尋ねることが難しいのと同じで、あなたが問題の解決策に触れられないように、心が分断してしまっているのです。
「失敗したらどうしよう」と悩んでいる人は、実は失敗した場合のことを具体的には考えていないものです。失敗したときの状況について詳しく思い描くことを「怖い」と感じて、その情報を書き込んだ「不安の元」の部分を「普段の心」から追い出しているのです。
これ以外でも、置いてきぼりにされたらどうしようとか、結婚できなかったらどうしようとか、就職できなかったらどうしようとか、様々な不安があると思います。
もしその不安が、不自然に続いてしまったら、そこには同様の心の分断があるかもしれないのです。この構造を理解しただけでも、少しは不安が軽くなるはずです。
そして更に、比較的簡単で誰にでもできる解決方法を説明します。キーワードは、「扱えるようにする」です。不安の元を普段の私に取り込めば、扱えるようになります。そして扱えるようになれば、不安そのものが解消してしまうのです。
そのためには、相手の正体を見破ることが必要です。表面的に分かったと思うだけでは解決しない不安も、実感を伴ってありありと感じるレベルになると、私たちは「これだ」という納得感が得られます。このとき初めて私たちは、不安を普段の自分に取り込み、それを扱えるようになるのです。
更に実践的な作戦を二つ挙げてみましょう。
第一は、あなたが日頃から考えたくないと思って避けていることがあれば、まずそこにチャレンジすべきです。
例えば、あなたがAさんのことを嫌いで考えたくないと思っているけれど、実はそのAさんが不安の元だったとしましょう。あなたは、心の中でAさんの顔に「嫌い」というレッテルを貼っていますので、そのままでは考えにくいはずです。もしあなたが、そこに問題の解決があると薄々気づいているなら、チャレンジする方法があります。それは、可能な限り細かいところを思い出すという方法です。
例えば、Aさんとのやり取りの一つひとつを細かく思い出すとか、Aさんの細かい特徴を30挙げてみるとか、何か一つのことを徹底的に挙げてゆきます。
そして更に、比較的簡単で誰にでもできる解決方法を説明します。キーワードは、「扱えるようにする」です。不安の元を普段の私に取り込めば、扱えるようになります。そして扱えるようになれば、不安そのものが解消してしまうのです。
のような作業を続けてゆくと徐々に不安感が軽くなってゆくのではないでしょうか。私たちは、経験的にこのことを、「覚悟を決める」とか「腹をくくる」などと呼んでいますね。
第二は、不安の起きる前に遡る方法です。今感じている不安が起きる前に遡り過去の自分になったつもりで今を眺めてみます。最初に何が起きたのか、次に何が起きたのか、そしてどのように不安になったのか。もし何も変化を感じなかったら、更にもう少し過去に遡り、そこから同じことを繰り返して考えてみるのです。
前の例なら、Aさんのことを嫌いになる前に遡り、そこから現在の状況を眺めてみるのです。
どうでしょうか。また少し不安が軽くなったのではありませんか。
吉家重夫。心理コンサルタント。日本心理アドバイザー協会会長。「統一場心理学」提唱者。
1994年「内在者理論」という新たな心理学を提唱。1996年、応用心理学研究所設立。1999年、日本心理アドバイザー協会設立。2001年、年「内在者理論」を発展させた「統一場心理学」を提唱。
目次(全5回) |
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第5回 「上がり症を治す!」 |
第4回 「新型うつについて」 |
第3回 「うつについて」 |
第2回 「不安って、どこからくるの?(2)」 |
第1回 「不安って、どこからくるの?(1)」 |