適応障害とは社会心理的ストレスによって引き起こされた感情・行動の反応の中で、今まで普通に行えていた生活に支障が出てしまった状態になった場合に診断されます。
現れる症状は様々で、精神的症状(抑うつ ・不安・イライラ・集中力の低下など)、身体的症状(不眠・腹痛・腰痛・食欲低下・動悸・冷や汗・手先や唇の震え・倦怠感・耳鳴り)、行動に見られる症状(・遅刻欠席・衝動的な言動・過度の飲酒・強い貧乏ゆすり・生活リズムの乱れなど)があげられます。
私たちは仕事や人間関係で上手くいかないとへこんだり、落ち込んだりします。ストレスによる不調はつい「誰でも経験すること」と流しがちですが、実はこの適応障害は、新型コロナによって、それぞれストレスの在り方が大きく変化したため、大きな社会問題となりつつあるのです。
適応障害は出る症状がうつ病と似ていますが精神疾患にはあてはめず“軽いうつ”と分類する専門家もいます。うつ病との大きな違いは、ストレスの原因から離れると症状が大きく回復するところです。
しかし放っておくと、早期治療が困難なうつ病やその他のメンタルヘルスの病気になって、休学や退職につながってしまうため、早めの対応がポイントとなります。
世界経済が混沌とし、不安定な社会状況となっている現在、多くの職場で心を病む人が増えてきています。職場要因での適応障害は仕事でない時には元気な場合が多いため、数年前までうつ病とは異なる「現代型(新型)うつ病」と呼ばれ、原因は若者の甘さ、という論調もありました。
しかし適応障害は決して「性格や甘えによるもの」ではないことがわかっています。新型コロナ期に調べてみると、実際には、在宅ワークで会社に行かないことがストレス要因だったり、休日も仕事のことばかり考えたりするような真摯に仕事に取り組む方に発症が多いそうです。
適応障害は病気と健康の境目にあると認識して、心のサインを見逃さないようにしましょう。
適応障害のケアで重要になるのは、まず働く環境を調整すること、そしてストレスに適応できる心を取り戻すことです。職場適性との不一致は本人、企業ともに不幸な結果となり、2018年頃から始まった働き方改革では、企業が労働者の心の健康をサポートするために、休職制度を整備すること、産業医を積極的に活用するよう指示されています。
特にコロナ禍においては、企業側と働く人のコミュニケーションがより求められています。ハラスメントの様なストレスフル環境である場合はもちろん、自ら心身の変調を感じたら「どういった職場ならストレスを感じないか」など、勇気をもって上司や医師、周囲の同僚に投げかけましょう。
実際、適応障害と診断されて具体的な対処をしない場合、5年後に40%以上の人が、うつ病などの診断名に変更されている事実があり、何らかの行動が必要です。
・休職という選択肢を残す
休むわけにはいかないという気持ちがプレッシャーに。会社に在籍したまま一定期間の休職制度を導入する企業も増えています。
・脳への情報入力を減らす
適応障害の一番の薬は、ゆっくりとした休息です。休憩時間や休日は、脳への情報入力を減らすように心掛けてください。
・薬は少量・短期で
不眠や不安が強い場合には、薬物療法が行われることがあります。もし処方された場合はより少量を短期間使うのが基本です。
・友人や上司を頼る
心を病むと周囲からの評価を気にして萎縮しがちです。困ったことがあれば時間を取って同僚や上司に相談するようにしましょう。
・完璧主義を解消する
仕事でもプライベートでも完璧主義で自分を追い詰めることのないように、考え方を見直す視点も大切です。
・旅行は慎重に
元気を取り戻そうと旅行を選択する人も多いですが、短期の環境変化は、実はかえって見えないストレスとなることがあります。
※当記事は弊社発行誌『イキイキ生活通信』に掲載された内容を再載しております。
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