2020年に行われた国民生活時間調査によると、日本人の睡眠時間は減少傾向にあり、特に働き盛りの40代、50代は男女とも減少率が顕著でした。その要因として一番にあげられるのは、やはり新型コロナウイルスの感染拡大です。その不安やストレスが長期に続くことで、眠れなくなった人、寝ても充分な休養にならないと感じる人が大幅に増えているのが実情です。
もう一つの要因が就寝前の行動の変化。全世代でスマートフォンの利用時間が大幅に増えており、不眠に悩む方の4人に3人程度(73%)がベッドにスマートフォンを持ち込んでいることがわかりました。就寝前のブルーライトは、脳を覚醒状態にしますので、この生活習慣の変化が、睡眠に悪影響を与えているのは間違いありません。
「気分がすぐれない」「イライラする」などの心の不調は、脳の疲れのSOS。それをリセットしてくれているのが睡眠です。私たちは睡眠によって、副交感神経を優位にして脳をリラックスさせます。
しかし、充分な睡眠をとらず、脳の疲労を回復させずに朝を迎えると、心身を整えるカギとなる自律神経に悪影響を及ぼし、身体は慢性的な疲れ、めまいや冷え、便秘を伴い始めます。これらを放置すると心の病を発症する原因となってしまいます。
理想的な睡眠時間を8時間と設定すると、私たちは、寝室で人生の3分の1を過ごしていることになります。なかなか深い眠りが得られない!という方は、そんな長い時間を過ごす寝室環境をまず改善してみましょう。
人間は仕事場など家の外では、交感神経を活発にさせる性質がありますので、寝室空間をまずは副交感神経優位、つまり、リラックスできる状態になるようコーディネートします。そして毎日入眠前の1~2時間をそこで過ごすようにすると、寝室に入るだけで「ここは安心できる場所だ!」と脳は認識し、副交感神経に切り替える習慣がつきます。
もう一つ、脳のスイッチ切り替えを促してくれるのが入眠ルーティンです。寝る前に五感に優しく刺激を与えるのを習慣化すると、それも脳は覚えます(光による視覚の刺激は交感神経を刺激するのでNG)。方法はそれぞれ違って大丈夫ですが、適度な五感への刺激によって、脳は睡眠中心身の癒やしに必要な「成長ホルモン」の分泌を増やし、心身をよりリラックスさせるのです。
日々のストレスに負けないために!寝る前の一工夫、チャレンジしてみてはいかがですか?
深い睡眠へ導くための「照明・寝具」
◆間接照明(重要度:★★★)
間接照明のやさしい光の中で過ごすと、脳は安眠ホルモン「メラトニン」を分泌し始めます。照明の明るさは100-200ルクス(宿泊施設の客室のような明るさ)で、電球の色は低い赤みを帯びた光のものがおすすめ。真っ暗闇は本能的に不安になり、熟睡しにくくなるそうです。
◆シーツ(重要度:★★☆)
肌が直に触れるシーツ。肌ざわりがやわらかく、なめらかな寝具を選ぶと、中途覚醒がしにくいという実験結果が出ています。シーツの色を寒色系にすると心理学のプライミング効果によって副交感神経が優位になり、眠りにつきやすくなるそうです。
◆マットレス(重要度:★☆☆)
世界で活躍するトップアスリートは例外なく、ベッドやマットレスにこだわります。体格、体重、骨盤の位置など人それぞれですが、その人にとっての快適な寝姿勢は睡眠中の身体や脳の血流をよくします。ぜひ最適な心地よい固さのマットレスを探しましょう。
熟睡を誘うための 「入眠ルーティーン」
◆お風呂(重要度:★★★)
お風呂に入ってあがった体温は、だいたい90分かけて元に戻っていきます。体温が戻ったタイミングで布団に入り入眠すると、脳はよりリラックスしやすいので、寝つきが悪い方は、入浴時間を睡眠の90分前に逆算しましょう。スッと眠りにつきやすくなります。
◆飲み物(重要度:★★☆)
温かい飲み物を飲むと、自然に胃・腸・食道が温まるため、熟睡に必要な深部体温があがります。熱すぎる&冷たい飲み物や、眠りを阻害するカフェインはNG。白湯・ホットミルク・ホットジンジャー・ルイボスティーなど、お気に入りの飲み物を見つけてください。
◆アロマ(重要度:★☆☆)
日中特に交感神経が高まりやすい方は嗅覚の刺激がおすすめ。寝室にアロマディフューザーやキャンドルを置いて室内をお気に入りの香りで満たしてみて下さい。リラックスして眠りにつけます。ラベンダーやローズマリーなど自律神経を整える香りをお選び下さい。
※当記事は弊社発行誌『イキイキ生活通信』に掲載された内容を再載しております。
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