健康コラム
Healthcare Column.

孤独は万病のもと? つながりこそ最大の免疫力

孤独な立場は感染症にかかりやすくなる?

ここ数年、特にコロナ以降、私たちの暮らしには大きな変化がありました。なかでも目立つのは、人と会う機会が減り、家で一人で過ごす時間が増えたことです。会話の機会が少なくなり、「なんとなく元気が出ない」「気持ちが沈みがち」と感じたことはありませんか?

実は、こうした孤独感が私たちの体、特に免疫力に影響を及ぼすことがわかってきています。
人は他者とのつながりが減るとストレスを感じやすくなり、ストレスホルモンのひとつ「コルチゾール」が過剰に分泌されます。このコルチゾールは、本来は体を守るために必要なホルモンですが、長期間にわたって多く出続けると、免疫力を大きく低下させる原因になることがわかってきたのです。

免疫力が下がると、単に感染症にかかりやすくなるだけでなく、高血圧や糖尿病など、シニア世代が気になる生活習慣病の予防力も弱まってしまいます。今回は、人とのかかわりを通じて起こる免疫力の変化の理由とその対策をまとめました。

●なぜ「孤独」が健康に関係するの?

人間は、長らく集団で助け合いながら生き延びてきた種です。
そのため、ひとりきりの状態(=孤独)は、脳にとって「危険な状況」だと感じやすくなるよう遺伝子に組み込まれています。仲間や家族から離れた状態は、外敵への対応力が落ちる=命の危機ととられ、脳がストレス反応を引き起こすのです。

●孤独のホルモン「コルチゾール」とは

コルチゾールは、副腎皮質から分泌されるホルモンで、血糖値の調整や血圧の維持、代謝の安定などに関わっています。孤独や慢性的なストレスを感じると、このホルモンの分泌が高まり、心身を守る働きを担います。
しかし、長期間にわたり分泌が続くと、免疫細胞の働きが抑えられるほか、筋肉の分解や骨密度の低下といった老化の進行にも大きく関係していると考えられています。

●WHO が「孤独解消」を目指す委員会を発足

WHO(世界保健機関)は孤独を「差し迫った健康上の脅威」と位置づけ、各国での対策拡大を促すため、2024年に「社会的つながりに関する委員会」を発足。2024年から2026年の3年間、孤独と孤立は世界的な公衆衛生の優先課題とされ、解決に向けた取り組みが進められます。

人との「つながり」は、心と体を守る源になる

「孤独がそんなに体に悪いなんて……」と、少し意外に思われたかもしれません。でも大丈夫。人は誰でも、知らず知らずのうちに誰かとつながりながら生きています。

ふとした会話やそばにいる存在が、思っている以上に心と体を支えてくれているのです。そして、その「つながり」から生まれる安心感は、ストレス反応をやわらげ、ストレスホルモン(コルチゾール)の過剰な分泌を抑えてくれます。

人との関係は、心の安定だけでなく、免疫機能や自律神経のバランスを整えるうえでも大切です。免疫力を保つには、栄養や睡眠に加えて、人とのかかわりも実かせない要素だといえるでしょう。

たとえば、職場や家族との何気ない会話、趣味仲間とのやりとり、ご近所との挨拶など。そんなささやかな交流が、心に安心感をもたらし、体の免疫力をしっかり支えてくれるのです。無理に特別なことをしなくても大丈夫。大切なのは、「つながっている」という実感を日々の暮らしの中で感じること。
その積み重ねがあなたの毎日をより健やかにしてくれるはずです。

※当記事は弊社発行誌『イキイキ生活通信』に掲載された内容を改編・再載しております。

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