健康コラム
Healthcare Column.

免疫と薬の話

日本は、世界有数の薬の消費量が多い国として知られています。
普段から病院で処方された常備薬をかさず飲んでいる方は多く、素早く効く鎮痛剤や抗炎症薬は薬局やドラッグストアが身近にたくさんあり、どこでもいつでも手軽に購入できます。

しかし、それら殆どのものは一時的に症状を緩和するためのサポート役に過ぎず、根本的な治癒を目的としたものではありません。身体のトラブルを解決するのは、あくまでも自らの免疫力です。
今回は、薬が免疫に与える影響について特集します。

「薬だから安心」そんな思い込みが過剰摂取を生む

免疫力は病気から体を守る重要な防衛機能です。免疫システムは体内に入った有害な菌や異物を識別し、排除しつつ、傷ついた部分の修復も行います。そして「病院の薬」は本来、免疫力、つまり自然治癒力をサポートするためのものなのです。 例えば、内臓の働きや血圧を調整する薬は、身体の一部が不調な際に一時的に機能を補い、その間に免疫力が回復するのを助ける役割を果たすものです。

しかし、日本では多くの患者に「薬=治療」と考えが浸透しており、病院で薬がもらえないのは逆に不安、という人もいるようです。
例えば、風邪のようなウイルス性疾患に薬の代表とも言える抗生物質は効果がありません。にもかかわらず、二次的な細菌感染(例えば肺炎や副鼻腔炎)を予防するため「念のために」抗生物質が処方されることがよくあります。この背景には、日本は諸外国に比べ、健康保険によって安価に薬が手に入れやすい状況が影響していることが考えられます。

見過ごされがちな悪影響

問題は抗生物質には腸内の善玉菌を減少させ、結果的に免疫力を低下させる副作用があることです。しかし、プロバイオティクス(腸内細菌学)は医学的に比較的新しい分野であるため、十分に理解していない医師もおり、それらの副作用がしばしば軽視されることがあります。

また、解熱剤や抗炎症剤についても、短期的な使用には問題ありませんが、炎症は免疫反応の一部であり、細胞の修復や再生に不可欠なものです。それを抑える薬を常用していると、必要な時の免疫反応が弱まる可能性が指摘されています。 さらに、睡眠薬や鎮痛剤の長期使用は中枢神経に影響を与え、ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌が増加し、それによって免疫力が低下してしまうことが研究によって示されています。

もちろん様々な新薬開発によって、以前は治療できなかった病気をケアできるようになったことは素晴らしいことです。しかし、一方で必要のない薬が過剰に処方され、その結果、免疫力の働きが低下してしまうのは本末転倒と言えるでしょう。

常に免疫を高める意識を

薬を必要とする人ほど、免疫力を普段からしっかりと高めておくことで、その使用を最小限に抑え、逆に効果的に活用できるようになります。とにかく大切なのは、免疫細胞の約7割を生み出す腸の健康を意識することです。発酵食品を積極的に摂るほか、適度な運動や十分な睡眠も、腸内環境の改善につながり、免疫力を保つ助けとなります。

薬と免疫の役割をそれぞれ理解しながら、生活習慣と医療をうまく組み合わせていくことが、健康長寿の大切なポイントなのです。

※当記事は弊社発行誌『イキイキ生活通信』に掲載された内容を改編・再載しております。

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