皆さんは漢方薬や鍼灸などの伝統医療が、正式にWHOに認定(採択2019年、発効2022年)されていたことをご存知でしょうか?
この出来事は、西洋医学一辺倒だった医療基準の転換点です。何より、中医学(中国を中心とした東洋医学)だけでなく、独自に発展してきた日本の伝統医療も同じように評価されたという点で、日本の医学界の歴史においても重要な出来事です。
これらの背景には、世界的なパンデミックの経験があります。世界中の医療現場が、ワクチンや薬の副作用を含めた感染症の脅威を目の当たりにしたことで、自己の免疫を高める伝統療法が急速に見直されているのです。
すでにアメリカやドイツの医学部では、伝統医療の一環として漢方を学ぶ授業が導入され、伝統療法の知識を西洋医学と合わせて使えるように学んでいます。この動きは医療の多様なアプローチを提供し、健康を守る方法を広げています。
次にこれら先人の知恵について軽く触れてみましょう。
●漢方、鍼灸、気功
中医学はもともと、古代中国の皇帝の健康を守るために発展しました。数千年の歴史を持つ古典書物を基礎としながら、今も発展し続けています。中医学では、漢方薬を使って体内の「血」「水」のバランスを整え、独自の価値観である「気」の流れを整えることで自己治癒力(免疫力)を高めます。
●ハーブ精油、ホメオパシー、薬草学
中世ヨーロッパでは、修道院が薬草園を管理し、ハーブ療法の知識を広めました。この伝統は現代でも受け継がれており、ハーブ療法は現在の西洋医学の礎であり、科学的研究の対象となっています。
特にドイツの薬学は臨床試験を重視する価値観を持ち、現代医療にも引き継がれています。
●薬草学、温浴療法、発酵食
日本の漢方医学は、古代中国の医療知識が奈良時代に伝来したことに始まり、その後、日本の風土や文化に合わせて独自に発展しました。江戸時代には、漢方素材を混ぜた食事のレシピが開発され、健康と娯楽を兼ね備えた入浴文化が広まるなど、より多くの人に親しまれる工夫がなされています。
●薬木、シャーマニズム
インディオの伝統療法は、数千年にわたる自然観察と実践に基づいています。彼らは自然界の植物や動物を利用して健康を維持し、病気を治療してきました。また、大自然に祈りを捧げるシャーマニズムの療法は、精神的なストレスやトラウマの治療に効果があり、心の健康をサポートしています。
●スパイス、オイルマッサージ
アーユルヴェーダは、古代インドのヴェーダ文献に基づいて発展し、5,000年以上の歴史を持っています。ごま油などの植物油をマッサージオイルとして使い、スパイスを薬として食事やお茶に取り入れます。インドは医学の歴史も長く、特に植物の力を中心に免疫力を高める方法が特徴です。
植物療法(フィトセラピー)は、古くから植物やその抽出物を使って病気を治療する方法です。アメリカ先住民が伝統的に薬用として利用していた植物、太平洋イチイ(Taxus brevifolla)から発見された抗がん剤「パクリタキセル」は、乳がんと卵巣がんの治療に広く使用されています。
パクリタキセルの成功は、植物由来の治療法の重要性を再確認させるものであり、今も多くの植物が様々な医薬品開発に役立てられています。
アピセラピー(Apitherapy)は、蜂製品(蜂蜜、プロポリス、ローヤルゼリー、蜂毒など)を利用した治療法で、古代から存在しています。蜂製品を利用した治療法の起源は非常に古く、古代エジプト、ギリシャ時代には既に利用されていた記録があります。
特に蜂毒は、リウマチや関節炎の治療に用いられ、近年、蜂毒の成分が、炎症を抑え、免疫系を刺激する効果があることが科学的に証明されています。この療法は、先進医療の一環として、慢性疼痛や自律神経失調症の治療にも応用されています。
※当記事は弊社発行誌『イキイキ生活通信』に掲載された内容を改編・再載しております。
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