健康コラム
Healthcare Column.

「心」の健康と「光」の関係性

夏の日差しやスマートフォンのブルーライトは健康リスクが連想されがちですが、実はそれらが役立つものであることをご存じですか?
「光」の心の健康への活用法、ご紹介します!

気分の安定と幸福感は光によって生み出される

皆さんは最近、太陽の光を浴びていますか?夏になると「できるだけ日差しを避けよう」としてしまいがちですが、夏に何だか心の調子が良くない方、睡眠の質が下がったり、気持ちが落ち込んだりしやすい方は、実は日光を浴びていないことが原因かもしれません。

私たちの日々の心の気分の安定や幸福感の向上をもたらしているのは、脳内で分泌される「セロトニン」という神経物質です。そして脳からのセロトニンの分泌を担っているセロトニン神経は、日光によって刺激を受けて活性化することがわかっています。

日光の当たらない環境、例えば睡眠時にはその活性化はほとんど行われず、セロトニンは合成されません。朝起きて、光を浴びることで、脳はセロトニンの生成を始め、日々の生活に必要な意欲や心の安定を図るのです。
また、日の光を浴びない生活を続けていると、実はその分夜に分泌される睡眠ホルモン「メラトニン」の量もだんだんと少なくなり、睡眠障害の原因ともなってしまいます。日光を浴びることは、心の健康にとって欠かせないものなのです。

午前中のブルーライトは自然な睡眠に役立つ

ブルーライト(青色光/短波長光)は、紫外線の次に波長が短く、非常にエネルギーの強い光です。LED を使用したパソコン、テレビ、スマートフォンなどの液晶画面からも多く放射されており、太陽からも同じ青色光が放射されています。

ブルーライトは夜間に浴びると、自律神経が交感神経優位となり、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が抑制され、入眠困難や睡眠の質の低下を引き起こすため、一般的にブルーライトは悪いものと考えられがちです。しかし、ブルーライト自体は、体内時計をリセットして睡眠モードから活動モードへ目覚めさせるスイッチの役割を果たす力を持っています。

朝にブルーライトを浴びることで、体内時計がリセットされ、セロトニンの生成が活性化されることが研究でわかっています。例えば、朝にテレビをつけたり、スマートフォンでメールや情報を確認するのは、実はよい習慣の一つなのです。また、ブルーライトを浴びてから約15時間後にメラトニンの分泌が増えるため、例えば夜12時に就寝したい場合、その15時間前の午前9時ごろにブルーライトをしっかり浴びておくと、体内時計のコントロールによって、脳は自然に就寝の準備を整えるようになります。

ブルーライトは抑うつ状態の改善や記憶力の向上にも役立つ可能性が指摘されています。実際に、体内時計の混乱が原因で起こる季節性感情障害(SAD)の治療法として光療法が確立されており、高照度のブルーライトを使用することで、症状の改善が見られることがあります。
ただし、朝浴びるべきブルーライトを夜に大量に浴びてしまうと、休ませるべき脳を再度覚醒状態にし、脳や神経にダメージが蓄積してしまうので、そこはやはり注意するべきポイントです。

先進のうつ治療・光(ブルーライト)療法

季節性うつ(SAD)に対する高照度光療法は、病院または家庭で行うことができ、特に英国で発展した治療法です。この療法では、毎朝決まった時間に1~2時間程度、2500~10000ルクスの光を浴びます。 ブルーライトは太陽光にも含まれているため、元々は日光を利用した治療法でしたが、天気に左右されたり、紫外線による肌ダメージの懸念もあったため、現在ではクリニックや自宅で専門の機器を使用して行うことが主流となっています。

※当記事は弊社発行誌『イキイキ生活通信』に掲載された内容を改編・再載しております。

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