健康コラム
Healthcare Column.

老いは抗うことができる

最新の医学研究によれば、老化は細胞の「病」と同じ性質を持ち、その原因となる細胞を除去すれば若さと健康を保つことができるとわかってきました。今、老化に関する常識が覆されつつあります。

老いは抗うことができる時代に

長年「なぜ人は老化するのか」という問いに対し、医学界は理論が先行し、具体的な解明はされていませんでした。しかし、近年の医学の進歩により、様々な臓器や組織に長期間存在し、年齢とともに炎症や遺伝子に悪影響を与える細胞がみつかりました。この細胞は「老化細胞」と名づけられ、老化の原因として研究者によって解析が進められています。

老化細胞とは、簡単に言えば、古くなって細胞分裂しなくなった細胞のことです。通常、細胞は一定の回数分裂を繰り返した後に自ら死んで新しい細胞に置き換わり、体外に排出されます。しかし、細胞が分裂を停止しても死なずに体内に残り続けると、周囲の健康な細胞や遺伝子に悪影響を与える物質(SASP)を分泌し始めます。その仕組みは、箱の中に一つの腐ったリンゴを入れると、その隣にあるリンゴもどんどん腐らせるのに似ています。

そうやって増えた老化細胞が皮膚や骨にたまると、炎症や骨粗しょう症を引き起こし、内臓にたまるとその機能が低下します。逆に、その老化細胞が周囲に広がる前に意図的に除去できれば、人は老いに抗うことが、事実上可能であることがわかってきたのです。

最新「若返り」研究状況

東京大学医科学研究所の中西教授は2021年、ある酵素が増えることで老化細胞を生き延びさせていることを突き止めました。その酵素の働きを妨げる特別な活性剤を使ったマウス実験では、筋力回復や臓器の機能改善といった「若返り」効果が確認されました。これは、体内酵素を調整することで老化細胞が蓄積するのを防ぎ、老化を遅らせることができることを示しています。

また、オックスフォード大学の研究で、若いマウスと老年マウスの血管をつなぎ、血中の免疫交換を行ったところ、若いマウスは急激に老化し、老年マウスは若返ったという結果が論文に掲載、若い血中免疫には老化細胞を除去する働きがあることがわかっています。

セノリティクス(老化細胞除去)で100歳からの「余生」を楽しむ!

従来の免疫療法に最新の医学を取り入れ、老化細胞を認識し排除する治療法をセノリティクスと言います。セノリティクス最大のメリットは、外見や内臓機能だけでなく、遺伝子レベルで若さを保つ「生命力」を維持できる点です。体の自然な防御メカニズムを活用して老化細胞を排除するため、副作用が少なく効果的です。また、単に寿命が長くなるだけでなく、慢性疾患のリスクも減り、QOL(生活の質)が劇的に向上します。

老化細胞が分泌するSASPの悪影響で最も注意すべきは遺伝子発現の変化です。特に遺伝子は、免疫が細胞を修復する際に若くて機能的な細胞を再生するための大切な設計図です。これが老化細胞によって傷つくと、再生する細胞が変異を起こし、最悪の場合、それががんの原因となることがわかっています。 そして、老化細胞ががんを誘発する作用が判明したことで、がん治療にも大きな進展が見られています。

この結果、今後25年で100歳以上生きる人の数が大幅に増えると予想されています。高齢化が進んでも老いなき長寿社会が実現することは、誰しもが望むものです。全ての人が不安なく長生きできる時代が近づいてきているのかもしれません。

※当記事は弊社発行誌『イキイキ生活通信』に掲載された内容を改編・再載しております。

[戻る]  /  イキイキ生活通信読み物一覧へ