健康コラム
Healthcare Column.

お腹と自律神経「便は心を映す鏡」

私たちの心と体の状態は、お腹の中の環境と深くつながっています。ストレスは腸内細菌に影響を与え、結果的に便の状態に現れます。便は心の状態を教えてくれるサインと言えるのです。

ストレスがお腹の調子に直結するメカニズム

私たちの体はストレスを感じた時、無意識のうちに主に二つの反応を示します。一つは「戦おう」としてストレスに立ち向かう反応、もう一つは「逃げよう」としてストレスから逃れようとする反応です。どちらの場合でも、体は緊張状態に陥り、その結果として交感神経が活発化します。

交感神経が活発化すると、腸の動きは鈍くなり、便秘になりやすくなります。そして腸の活動が低下したままでは、便が腸内に長く留まり、水分が吸収されて頑固な便秘となるのです。

また、ストレス反応が非常に強い時は、腸は反対に非常に過敏になり、過剰に動きだすことがあります。これは下痢の原因の一つ。腸の動きが急に速くなったことで、便が早く出てしまった状態です。

さらに心が不安定な時には、便秘と下痢が交互に起こることがあります。 これは自律神経が相当乱れており、心と体の両方の調和が崩れている状態を示します。このような状態の方は早急なケアが必要です。便秘や下痢は、健康に注意を促す身体からの重要な警告、サインなのです。

便の色、ニオイも心の状態で変わってくる

便の色やニオイは従来、食べ物が原因だと考えられていましたが、心の状態も便の色にも影響を与えることがわかっています。例えば、ストレス性胃炎で出血がある場合、便は黒くなることがあります。また、腸内で生成される幸せホルモン・セロトニンが不足すると、便が焦げ茶色になることもあります。

特に便のニオイの変化は顕著です。心の状態が腸内細菌に影響を与えることはわかっていますが、ストレスで腸内が悪玉菌で溢れると、便の腐敗臭が強くなり、善玉菌が優勢な場合は便が適切に分解され、臭いは和らぎ、色も善玉菌の色「黄金色」になるのです。

心が良好な状態を示す「美便」とは?

自分の心がどのように感じているかを、便を通じて知ることは、健康な心を保つのに大変役立ちます。また、その健康な状態の手がかりとして、自律神経が落ち着いている状態を表す「美便」を目指しましょう。簡単に言うと、「美便」とは、バナナ型で自然な黄色をしており、嫌な異臭がしない便のことです。

毎日このような状態の便が出れば、心と体の両方が健康であるという証拠です。美便は、ストレスの少ない生活、心の安定、そして腸の健康が整っていることを意味します。

腸が栄養をしっかり吸収することは、心の健康にも大きな影響を与えます。バランスの良い食事をとることで、心に良い栄養素を摂取しましょう。

また、リラックスすることも腸の健康に役立ちます。便通には、激しい運動よりも瞑想やヨガ、深呼吸などの静かなエクササイズがおすすめです。質の良い睡眠を取ることも重要で、睡眠中に腸が整う深い睡眠を得られます。寝室の環境を心地よく保つためには、適切な温度と静かな環境を維持し、柔らかく快適な寝具を用意することがおすすめです。 毎日の小さな習慣が、美便を通じて心と体の健康を促進します。

(豆知識)「腸」は内臓最弱の臓器

「腸」は私たちの体内の臓器の中で最も繊細な部分です。 心臓や肝臓などの他の臓器がそれぞれ独立して機能するのに対し、腸は基本的な機能である排便を行うためにも、食物繊維や腸内フローラ(腸内細菌)のサポートが必要です。また、腸は非常に敏感で、わずかな刺激にも反応しやすいため、「ガラスの臓器」とも呼ばれます。専門家は、腸が進化の過程で他の臓器に比べて発達が遅れていると指摘していますが、その敏感さや脆弱さゆえに、体内の小さな変化や心の状態を素早く察知する力を持っています。

したがって、便の状態を通じて自分の健康状態を把握し、それに基づいて腸の健康を日々守ることは、私たちの全体的な健康にとって非常に重要です。

※当記事は弊社発行誌『イキイキ生活通信』に掲載された内容を改編・再載しております。

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