発達障がいの診断には、腫瘍マーカーや 血液検査、身体検査のような数値基準はありません。どのように診断するかと言うと、日常生活や社会生活上の困難・生きづらさがある点を確認することで診断を行います。
現在ではDSM―5(精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版)が診断基準となっていますが、 これも本人や周囲の理解を数値化・リスト化しているだけなのです。
発達障がいのグレーゾーンであると診断されても、ホッとする人はほとんどいません。なぜなら本人のツラさに何も変わりがないからです。逆に、生まれ持った特性でなく、この生きづらさの原因は、後天的要因が強く、自分自身に原因があると悩んでしまう場合が多く、「発達障がい」とは違う困難を抱えてしまうケースが多々あります。
発達障がいには大きく3つに分かれます。自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥・多動症(ADHD)、学習障害(限局性学習症、LD)です。
その中でもASDやADHDのグレーゾーンがあると、社会生活の様々な場面で困難さを感じる場面が増えます。例えば、職場の場合「同僚や上司と上手く会話できない」と人間関係で悩むなどが挙げられます。
障がいがあるか無いか、またはグレーゾーンであったとしても、自分の強み、弱みをしっかり自覚し、適切なサポートやトレーニングをすることで生きづらさを少しずつ解消していくことができます。まずは自分の特性を知ることから始めましょう。
[よくある特性]
・自分が正しいと固執することが多い
・こだわりが強すぎてトラブルが多い
・視野がせまい
毎食同じ物を食べたがる、いつも絶対にルーティンを行わないと気が済まないなど、ASDの人にはこの「執着・こだわり」がよく見られる特性の1つ。ASDのような障がいではなくても、同じ行動を繰り返すことで、安心感を得ることができたり、心身の健康にもいい影響がある場合もあるため一概に悪い面だけではありません。しかしその「こだわり」により、日常生活に支障が出ると、ASDの障がいとしての側面である可能性があります。この症状に当てはまる人は、「これがいい!これでいいに決まっている!」という風に、自分の価値観や方法で他者と対立しやすい傾向があります。
[楽に生きるコツ]物事を俯瞰で見ましょう
・細部にこだわらず、物事を広く捉える。
・自分が「固執」していることを自覚する。
・周囲の人は、すぐに否定せず、一度受け入れた後に意見をする。
[よくある特性]
・その場の空気を壊すことが多い
・他者の気持ちを察することが苦手
・人に共感できない
他者と会話するときに、言葉の意味やニュアンスを瞬時に判断しながら、その場にふさわしい発言をしたり、自分の気持ちや考えを共有することが難しい人がこのタイプに当てはまります。このタイプには、2つのタイプがあり、1つは一方的に話したり、冗談や例え話が通じにくい、曖昧や適当な表現が苦手、状況は伝えるが気持ちや感情を伝えるのが苦手な「言語的コミュニケーションの障がい」タイプ。もう一つは、視線・表情・姿勢・身振り・声の抑揚などがわからず、視線が合わない、焦点が定まらないことから、心情察知や空気察知が苦手な「非言語的コミュニケーションの障害」タイプの2つに分類されます。
[楽に生きるコツ]相手の立場を想像する癖を
・自分以外の他者の立場を意識する。
・目を見るのが苦手な場合は、目ではなく首元あたりを見るようにする。
・口頭でのやり取りではなく、メールやチャットなど文字でのやり取りを増やす。
[よくある特性]
・周囲の目が気になり挙動不審になる
・些細な事で傷つく
・共感性が高く、気をまわしすぎる
人の顔色や反応が気になり、自分が受け入れられているかという事に敏感な人が多い。上記の「コミュニケーション障がい型」の場合は、共感性は少ないですが、「不安・愛着型」の場合は逆に共感性が高く、相手の気持ちを汲み取りすぎるが故に、気を使いすぎて疲れてしまったり、相手が自分を嫌いなのではないかと過剰に不安感を覚える場合があります。このタイプは、客観性が低く、自分と相手の区分を混同してトラブルに発展する場合もあります。また音に過剰に敏感な人が多く、人によってはそこまで大きな音ではないと感じる音でも聴覚過敏の人にとっては頭の中でガンガン鳴り響く嫌な音に聞こえてしまいます。
[楽に生きるコツ]手と自分の感情を別物として考える
・状況を客観的にみる目を養う。
・自分と相手を切り離して考える。
・イヤーマフやノイズキャンセリングイヤホン、サングラスなど苦手な刺激を減らす道具を使う。
[よくある特性]
・ケアレスミスが多い
・時間を守れない
・整理整頓が苦手
・いつも落ち着きがない
ADHDは注意を持続させることが困難であったり、順序立てて行動することが苦手であったり、落ち着きがない、待てない、行動の抑制が困難であるなどといった特徴がみられ、そのために日常生活に困難が起こっている状態です。大人になるにつれて症状が収まる場合もありますが、虐待などの不安定な養育環境で育ったことが原因で、大人になってからADHDの症状が強く出る場合もあります。この場合、生来の特性に由来しないため、「子供の頃はきちんと生活できていたのに、自分がダメになってしまった」と感じやすい傾向にあります。
[楽に生きるコツ]自分ができる範囲を把握する
・自分がどこまでならできるのかを予測をたてる。
・完璧を求めすぎない。
・チェックリストを作りやるべきことをリスト化する。
・こまめにメモをとり、忘れない工夫をする。
※当記事は弊社発行誌『イキイキ生活通信』に掲載された内容を改編・再載しております。
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