腸内には多種多様な微生物が生息しています。そこから不適切な菌が体内に侵入すると、健康上様々な問題が起こり始めます。また、新型コロナウイルスの影響で、多くの方が菌の感染に敏感になっていることでしょう。自分の身体を守るために、意識してもらいたいのが「腸バリア」です。
腸バリアとは、腸管内部と体内の間に存在する粘膜のことであり、腸壁から異物の侵入を防ぐ役割の他、悪い菌を駆除する免疫（ＩｇＡ抗体）の働く場所となっています。新型コロナウイルスの流行が始まった頃、日本人の感染者数が海外に比べて比較的少なかったのは、日本人の腸の粘膜下に抗体が多く存在していたからとも言われています。しかし、報告によれば、一度新型コロナウイルスに感染した人の腸は粘膜層が薄くなりやすく、免疫が減少しやすいことが研究によって分かってきました。
これからの季節、食中毒などの菌トラブルが増える可能性があります。腸バリアの厚さを保つことは、健康の最重要課題とも言えます。
(1). 便をスムーズに排泄する役割
大腸から分泌される粘液は、大腸や便を覆って便が大腸の壁に直接触れることを防ぎ、有害な菌や物質から守る働きがあります。また、便を滑らかに移動させる潤滑油のような役割も果たします。粘液層が極端に薄いと便内の悪玉菌に反応して腸壁近くで免疫反応が生じてしまい、炎症を起こすこともあります。
(2). 有害な菌や物質から腸を守る役割
腸壁を覆う粘液層が厚くなると、細菌は腸の表面に接近できなくなります。粘液には有害物質を無力化する様々な免疫細胞が含まれ、悪玉菌やアレルギーを防ぎます。また腸粘液内の免疫細胞の中には微生物の種類や量を監視する役割のものもあり、腸内環境全体を整えるのにも役立ちます。
近年、増加傾向にある熱中症と腸バリアの関係性が明らかになっています。熱中症になると、腸の粘液層を保つのに必要な塩分や水分が、体温を下げる発汗に使われるため、粘液の分泌が低下し、腸バリアが薄くなることがわかっています。
高温環境下で運動を行うと、腸管運動が低下し、腸管壁が浮き上がることが報告されており、有害物質や病原菌が体内に侵入しやすく、炎症反応を引き起こしやすい状態になります。
熱中症は、菌が繁殖しやすい暑い季節に起こりやすく、腸内は処理しなければいけない菌が多数存在する状態です。夏に下痢をしやすい人は腸バリアが薄い場合が多いため、注意が必要です。
腸バリアが弱ると、消化器官での熱産生が増加し、体温が上がりやすくなるため、適切な腸バリアの維持が熱中症の予防にも役立つとされています。
腸バリアが薄くなるメカニズムはまだ完全には解明されていません。ですが以下のような症状が慢性的にある方は腸バリアが薄くなっている可能性があります。
・よく風邪を引く
・お腹が弱い
・食物アレルギーがある
・なかなか疲れが取れない
・イライラしたり落ち込むことが多い
・いつも何かしらの不調を抱えている
腸バリアが薄くなると栄養素や水分の吸収しにくくなります。さらに腸が炎症を起こすと、ストレスや不安に関わる神経伝達物質のバランスが崩れ、うつ病や不安障害のリスクが高まるとされています。
(1). 醗酵食・食物繊維を摂る
腸バリアを厚くするには、乳酸菌やビフィズス菌が含まれる醗酵食品が効果的です。同時に食物繊維やオメガ3脂肪酸を豊富に含む食材(イワシ、サンマ、サバなど)を摂ることでより厚くなります。逆に加工食品や糖分の過剰摂取は、腸バリアを薄くしてしまいます。
(2). 充分な睡眠
ストレスによって、腸は様々な影響を受け、大腸バリアの機能を低下させます。特に睡眠不足によって分泌されるストレスホルモン「コルチゾール」の量が増加すると、腸内細菌叢のバランスが大幅に崩れ、腸バリアも薄くなることがわかっています。
(3). 腸の乾燥を防ぐ水分補給
腸内が乾燥すると、腸の粘膜が損傷し始めます。粘液層に潤いがない状態が続くと悪玉菌優位の腸となるのです。一般的に1日あたり約2Lの水を摂取が推奨されるのは、腸内の乾燥を防ぎ、粘膜層の潤いを保つための十分な量でもあるからです。
(4). 薬の飲み過ぎには注意
薬の副作用も腸バリアを薄くする大きな原因の一つです。特に抗生物質は腸内細菌叢を破壊し、炎症を引き起こすことがあります。また非ステロイド性抗炎症薬も腸内細菌叢に影響を与え、腸バリアを損傷させることが報告されています。
ちなみに最新の研究ではプラチナナノコロイドが腸内の“アッカーマシンシア菌”を増殖させ、腸バリアを高めることが判明しています。プラチナナノコロイドのサプリメントは広く市販されておりますので、ご興味のある方はぜひお試しください。
※当記事は弊社発行誌『イキイキ生活通信』に掲載された内容を改編・再載しております。
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