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2012年2月24日

『牙をなくしたドラゴン』第1話「金のウロコ」〜歯なしの音氣噺し〜

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 昔むかし九州のあるところ
人里はなれた山奥に
牙をなくしたドラゴンがいました。
ドラゴンの名は「チドゥー」。
 チドゥーは子供のころから
友だちドラゴンと連れ立って
川の上流にある「御飯の滝」へ
よく遊びにいっていました。
 そこは瑞々しい木漏れ日が
苔むした滝壺を照らし
小鳥たちのさえずりが
遠近法に点描され
パノラマとなって広がる様な所。
山グルミをせっせと運ぶシマリスや
キョロキョロと周りを気にしながら
大好物の木の芽や草を頬張る
子鹿の群れやウサギの兄弟たち。
川ガニにお辞儀して
美味しそうに食べる猪の親子。
突然姿を現し みんなを驚かす
月の輪熊と月の狼も
御飯の滝はみんなにとって
大切な憩いのオアシスでした。
 蝶が舞い 蜂が飛びかう
水と光に満ちあふれた
御飯の滝の入り口には
大きな岩の門がありました。
 その門に金のウロコで作られた
立て札が二つありました。
「ここで古い心を脱いでゆけ!」
ただそう書かれた一つの立て札。
もう一つの立て札に
何が書かれてあったのかは
あとでお話しすることにして
主人公のチドゥーのお話しを
進めてゆくことにします。
 ところでドラゴンは
地球上に住む捕食類の
頂点に君臨していましたが
本当は雑食性だったって
知っていましたか?
 特にチドゥーは小さな頃から 
チョコレートとナッツが大好物。
それが原因で大切な歯を
虫歯にしてしまっていたのです。
 そのお菓子好き(砂糖)が招いた
決定的な話をしましょう。

 それは御飯の滝に久々訪れた
メシキコから渡って来たと言う
見知らぬよそ者
Crested Caracara
カラカラと名乗る
旅鳥がやって来た日のことです。
 友だちドラゴンが
いち早くカラカラ鳥を見つけ
「おいオマエ!そこの光る立て札の
言葉が目に入らないのか?」
「光ってて読みにくいゼョ!
ふむふむ〜なになに...
なんだか解らんが 
ここに置いてゆけば良いんだナ。」
 そう応えたカラカラは
古びたダウンジャケットを
脱ぎ捨て様としましたが
ふと大切な物がなかったかナ?と
ポケットをまさぐりました。
まぁ これと言って大切な物は
特になかった様ですが
故郷を旅立つ時に
妹のナバホからもらった
三つの種を手に取り出し
懐かしそうに見つめていました。
 やがてカラカラは お札に従い
岩戸門の前にある切り株の上に
ジャケットと種を置き
滝壺のあるオアシスへと 吸い
込まれる様に入ってゆきました。
 「オーイ今日はもう帰ろう!。」
チドゥーは「そうしよう!」と応え
友だちドラゴンの最後尾に着き
家路に向けて飛び立ちました。

 「バリハ〜イまたネ〜。」
 ムッチャギとロシータの
友だちドラゴンの二人は
それぞれの家に帰ってゆきました。
 チドゥーはと言うと
すぐには家に入らず
庭の大きなせん檀の木の下で
何やらごそごそ やっていました。
 どうやらチドゥーは
カラカラが置いていった種を一つ
拝借して来てしまった様です。

 大好物のナッツを爪に刺し
目を丸くし口のそばまで運びます。
「オーゥ なんて香ばしく
 軽やかなナッツなんだろう。」
 (実はこれはナッツではなく
カラカラのふる里の畑で採れた
ジャイアントコーンの実を
乾燥して揚げた物でした。)
 生唾を飲みながらチドゥーが
牙で噛み砕こうとした時です。
「コキーン」と硬球が飛ぶ様に
クリーンヒットな音が
頭蓋骨を通じ角まで響いたのです。
なんとドラゴンの象徴とも言える
大切な牙の左一本を 
自業自得で折ってしまったのです。
 このまま家に帰ったら
パパドラに きっとドヤされる...。
そう思ったチドゥーは
近くにあった白樺 の枝を折り
鋭い爪で器用に木歯を作り
折れた牙の補強に刺しました。
そして 家族に知られない様に
何喰わぬ顔で家へ入ってゆきました。
「ただいま〜ママドラ今日ネェ〜。」
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 その日からチドゥーは
御飯の滝にいっても
とにかくバレない様にと あまり
はしゃがず静かにしていました。
 時に立て札の示す言葉を無視し
餌食になった獲物を
友だちドラゴンが差し出しても
「今日はお腹の調子が変なんだ!」
なんて言い訳をしては
木の根や木の葉を食べていました。
 「オィ チドゥーうまいぜ〜
肉喰わねェと力が出ねェぞ!」と
ムッチャギが迫って来た時は
拒まず「それなら少しだけ...。」と
もじもじ場をつくろいながら
大きな口を開けずに食べられる様
サッと爪で肉を小さく刻み
パックと一口で食べて見せたのです。
 「まぁ〜可愛い食べ方ネ。」と
不思議な食べ方をするチドゥーに
ロシータが微笑みかけて来ました。
 *注釈*それまでの食べ方は
 立て札の言葉を守らなかった
 者に与えられる見せしめとして
 獲物は頭からシッポまで
 ガブガブと丸かじりしなければ
 ならないのが作法だったのです。
「ありがとうロシータ。 最近
天海で流行ってる食べ方らしいョ。
直接肉にむさぼりつくより
紳士的で奥ゆかしいだろう。」
「そう言われればそうネ...唖然と魅入っていたチドゥーでしたが
ついに運命の瞬間は訪れました。
 岩山の中腹にある まるで
怪獣が大口を開けた形相に似た
洞窟ステージの真ん中に進み
とぐろを巻いて座ったチドゥーは
ゆっくり鼻呼吸を六回連続で行い
深い瞑想状態で呼吸を整えます。
グリーンの眼球が次第に赤く光り
柳の様にしなやかだったヒゲが
指揮者の持つタクトに成り代わり
リンリンと廻り始めたのです。
それが陰と陽の渦を奇麗に描き
二重螺旋に離合した瞬間でした。
声になる前段階の「想いと念」が
ホワイトノイズとピンクノイズの
FM波となって 洞窟全体を
共振させ始めたのです。
 審査員と観客が固唾を飲み
ステージを見上げる視線に
チドゥーの胸の高鳴りも
いよいよピークに達し
腹の中で氣の充満した音玉が
光り輝くのが見てとれました。
 ゆ〜っくりと口を開き
龍曲を唸り吠えるチドゥー。
そのF分の一の美声は
低倍音と高倍音の二つの旋律が
宇宙的なハーモニーを奏で
癒しの健康讃歌となって
山全体に木霊しながら
観客全員の細胞に共鳴します。
 殆どの人は放心状態のまま
天を仰ぎ笑みを浮かべ
中には歓涙し隣の人と抱き合い
震えている人もいました。
 龍曲のうねりがエンディングに
差し掛かった時でした。
伝説の招き龍に現れると言う証
お腹のあたりのウロコが
神々しく金色に輝き
振動と共に身体から遊離して
観客の頭上に舞い上がったのです。
 会場はため息に包まれ
審査員全員が満場一致で
合格の札を上げたその時でした。
チドゥーの恐れていた「木歯」が
低周波の重複振動に絶え切れず
ついに大きく開けていた口から
飛び出してしまったのです。
これがまた運悪く
天井のミラーボールに当たり
合格札を上げていた審査員めがけ
落下したのですから大変。
「危な〜い!!!」。
寸前でかわした審査員が
怒りもあらわにチドゥーを指さし
「退場!退場!退場!」と
大声で叫び続けていました。
 
 壊れて割れたミラーボールと
チドゥーの金のウロコの破片が
散々と乱反射するだけで
もう会場には誰も残っていません。
 大勢の前での失態と騒動を悔い
チドゥーは完全にノックアウト。
その日以来 家にも帰らず
全てを捨てて御飯の滝壺の
底にある奥深い鍾乳洞へと
姿を隠してしまったのでした。
      (第2話につづく)。
 あっそうでした。もう一枚の
立て札には「全ての力を抜け」と
だけ書かれていましたとさ。

 *気が付くと書き始めていた
  得意の絵空ごと。ただの
  絵空ごとにならない様に
  エコロジカルでスピリ
  チャルな話題を盛り込み
  第四話まで展開して
  ゆくつもりです。
  どうぞお楽しみに...。
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投稿者 right : 2012年2月24日 21:17

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